認知症ケアを格段に楽にする中核症状の理解。

認知症ケアを格段に「楽」にするには、中核症状を理解することが一番の近道です。
こんにちは!当ブログの管理人のseiichi(認知症介護指導者)です。
第2回目も読んで頂きありがとうございます。
認知症ケアを行う上で絶対に避けて通れないのが、「中核症状」です。
何故中核症状を避けて通れないかというと、「認知症になると何らかの中核症状が必ず出る」からです。
では、中核症状についてみて行きましょう。
中核症状と行動・心理症状
認知症の症状には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」と言われる2つの症状があります。
この2つの症状の大きな違いは、認知症になると必ず出現症状と、認知症になっても出現しない場合もある症状という事です。
- 中核症状=必ず出現する。
- 行動・心理症状=出現しない場合もある。
中核症状は必ず出現します。しかし、行動・心理症状はケアの方法や環境を整えることで、出現を抑えることが出来ます。「行動・心理症状」に関しては、後日記事をアップしますね!
つまり、認知症ケアを行う上で、中核症状は避けて通れません。
避けて通れないという事は、それだけ重要な部分という事になります。
ですから、きちんと理解し、評価することが大切です。
実はその評価が「行動・心理症状の軽減」にもつながるのですよ。(#^.^#)
中核症状は大きく分けて3つ
- 記憶障害
- 認知障害
- 生活障害
記憶障害は、読んで字のごとく、記憶「出来ない」、又は、「失っていく」ことです。
認知障害は、「認知とは、ある事柄をはっきりと認めること」と辞書にあるように、事柄を認めることが出来なくなる障害です。
生活障害は、記憶障害や認知障害が出現することで、今まで問題なく行えていた日常生活が行えなくなります。
では、もう少し詳しく中核症状についてみていきたいと思います。
記憶障害
記憶障害には、2種類の記憶障害があります。
- 短期記憶障害
- 長期記憶障害
の2種類です。
短期記憶障害とは、今行った「出来事」を記憶出来ない。又は、一旦記憶したが、直ぐに忘れてしまう。という障害です。例えば、「日付が分からなくなる」や「物の置き場所が分からなくなる」などです。
長期記憶障害とは、簡単に説明すれば、「過去に記憶した記憶」を忘れてしまうことです。例えば、「通っていた学校の名前が出てこない」とか「勤めていた会社名が出てこない」などです。
厚生労働省は、記憶のメカニズムのついて、下記の図のように「イソギンチャク」を例に出し説明しています。
覚えることが出来なくなるだけではなく、覚えていたことも忘れていくのが認知症の記憶障害です。
記憶を忘れていく順序
記憶の忘れ方には順序があると言われています。
その順序とは、
- 出来事記憶
- 手続き記憶
- 感情
- 思い出
です。
この記憶の忘れていく順序は、認知症ケアを長く行っていると納得が出来ます。
みなさんの事業所には、認知症の方に嫌われる職員と好かれる職員が居ませんか?
認知症の方に好かれる職員は、認知症の方に対しても丁寧に接していますし、常に笑顔で接しています。
ところが嫌われる職員は、認知症の方に対して、上から目線であったり、雑に扱ったり、「さっきも言ったでしょ!」とか「何回言えばわかるの?」などの言動が多くみられます。(過去20年の私の経験からです。)
記憶障害があるのに、好きな職員と嫌いな職員を見分けるのです。
もちろん記憶障害が出現する分、感覚的な部分が補おうとする為、スタッフや他の利用者の表情などを読み取る感覚が鋭くなるのですが、それだけでは説明できない部分もあります。
普段、他のスタッフの前ではいつもニコニコして仕事をしているのですが、何故か認知症の方にだけ嫌われるスタッフがいるのです。色々と調べてみると、他のスタッフや利用者が居ない時に、「何回言えばわかるの?」「もういい加減にして!」などの発言があっていたようです。
言われたこと(出来事記憶)は忘れてしまうけど、言われた時の不愉快さ(感情)は長く残っていて、その感情の蓄積がそのスタッフの顔も記憶させたのではないかと思います。
皆さんも、思い当たるスタッフが居れば、そのスタッフの行動を細かく観察してみてください。
認知症の方には記憶障害が出ますが、全てを忘れていくのは、かなり進行してからだという事を忘れてはいけないと思います。
認知機能障害
認知機能障害については、下記の7つは理解する必要があります。
- 抽象思考の障害
- 失語
- 失見当
- 失認
- 失行
- 実行機能障害
- 判断の障害
です。
・抽象思考の障害とは、「物の共通な部分を取り出して考えたりする能力の障害」です。例えば、犬と猫の共通している部分と言われたら、皆さんはわかると思います。尻尾があって、四本足で・・・などです。これが分からなくなるのが「抽象思考の障害」です。
・失語とは、「読み書きができない、言葉がでない、会話が組み立てられない」などです。例えば、毎朝新聞を読んでいた方が、新聞を読まなくなったり、手紙を書くことが好きだった方が書かなくなったりして場合には「失語」を疑う必要があります。今まで普通に出ていた言葉が出なくなるのも失語です。
・失見当とは、「季節感のない服装をする、迷子になる、何回も日にちを確認する」などです。例えば、夏に厚着をしたり、冬に薄着をする。自宅の近くで迷子になるなどが見られるようになります。季節感のない服装に関しては、「感覚障害」を起こし温度に鈍感になっている場合もあるので、汗をかいているか?体が冷え切っていないか?などの身体状況を確認する必要もあります。
・失認とは、「人の顔が理解出来ない、自分の位置や空間を認識できない、音の理解が出来ない」などです。対象物が認識できない他に、「半側空間無視」なども失認に含まれます。音の理解が出来ない場合、火災報知器のサイレンなどが認識できない場合があるので、避難訓練などの時に確認をした方が良いかもしれません。
・失行とは、「掃除、着替え、歯磨き」などが出来なくなることです。その他にも、リモコンが使用できないなども出現します。以前は出来ていたことが、運動機能に問題が無いのに出来なくなります。「行為を失う」ことが「失行」です。
・実行機能障害とは、「プランを立てる、それを実行する」ことが出来なくなることです。例えば、料理をする場合、一つひとつの作業は問題なく出来るのですが、その作業を繋げて、料理を完成させることが出来なくなります。
・判断の障害とは、「考えるスピードが遅くなる、複数の物事を考えられなくなる」などです。このような場合は、考える時間を少し長くとることや、一つずつ物事を考えてもらう必要が出てきます。認知症の方のペースに合わせる必要があります。
生活障害
記憶障害や認知機能障害を起こすことで、「生活障害」は起こります。例えば、「仕事のアポイントを忘れるとは、友人との約束を忘れる。家が分からなくなってご近所さんに迷惑をかける」などです。特に若年性認知症で現役で仕事をされてる人の場合は、仕事を失うことに繋がりますので、今後の生活に直接支障が出てきます。
まとめ
認知症になると、このように様々な中核症状を発症します。この中核症状に、本人の性格や環境、抱えている病気が加わり、「行動・心理症状」へと繋がっていきます。
認知症ケアを行う上で、行動・心理症状の出現はケアをどんどん難しくしていきます。
つまり、認知症の方の言動や行動がどの中核症状から起こっているのかを考えると、中核症状に対するケアの方法を考えることが出来ます。
そのケアの方法を実践し、行動・心理症状が軽減すれば、認知症ケアが格段に楽になります。
万が一上手くいかなかった場合は、別の方法を考えて実践すればよいのです。
「行動・心理症状の陰に中核症状あり!」と言われるくらい、中核症状の理解は重要なことになります。
(「行動・心理症状の陰に中核症状あり」は私が考えた言葉です:笑)
認知症の原因疾患と合わせてきちんと理解しておく必要があります。
認知症ケアを格段に楽にするには、中核症状を理解することが一番の近道です。
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